灯火-ともしび-
* * *


夏海さんの家からの帰り道。
ケータイに出ることはないだろうけど、夏海さんのケータイに電話をかける。


プルルルル…


『発信音の後に…ピー…』


「あ、もしもし夏海さん。
俺と燈祭りに言ってもいいって言ってくれたんで、俺本気にしてますからね?
というわけで日曜日、燈祭りには浴衣で駅前に6時に集合ってことでよろしくお願いします。
あと、悪酔いはほどほどに、ですよ?」


ピッ。
かなり強引だったけど、約束は取り付けた。
…ちょっとずるい気がしないでもないけど、いい。一緒に行ければなんでも。


「にしても…。」


可愛かったなぁ、夏海さん。
寝言言っちゃう夏海さんも可愛いし、もう夏海さんなら何でも可愛い。
あんなに可愛い夏海さんを他の奴に見られなくて良かった。
悪酔いするなら俺の前でだけにしてほしい。
…とか言ったら怒られるけど、絶対。
でも、あんな無防備な夏海さんは色々と危ない。
俺は理性という理性をかき集めて(かつ小夏ちゃんもいたし)抑え込んでいたけど、他の奴が送っていたら…。


とそこまで考えて頭を振る。
出過ぎた考えだ。夏海さんに知られたら本当に殴られかねない。


とにかく今考えるべきは…


「日曜日、夏海さんと楽しむこと!」


夏休みの最大のイベントが、今日かなり急に決定した。
日曜日まであと5日。
夏海さんからの電話の返事を…とりあえずは待つ。

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