灯火-ともしび-
「あ、そ…分かった。ありがと。」

「朝ごはんできてるから、元気になったら降りてきてね。」


私がテーブルに置いたコップを持ち、小夏は部屋を後にした。
私は一度手放したケータイを拾い、着信履歴から発信した。
コール3回で、機械音から声に変わる。


「もしもし!」

「…おはよ。」

「おはようございます!あ、えっと体調大丈夫ですか?」

「…昨日はごめんなさいね。送ってもらったみたいで。」

「いいえ。酔ってる夏海さん、可愛かったですし。」

「…なに、それ。」

「いえっ!何でもないです!」

「それで、留守電聞いたけど…あれも何?」

「え、あ、約束です!夏海さん、OKしてくれました。」


あまりにも明るくて真っすぐな返事が返ってくるものだからかえって拍子抜けしてしまう。


「…酔ってる人とした約束が有効だと思ってる?」

「んー…夏海さんは前言撤回しない人だと信じています。」


くそ…この年下男子が…!
私をいいようにまとめようとしやがって…。


「前言撤回はするつもりないけど、酔ってる人間と約束するなんて風馬らしくないじゃない?」

「…それは…確かにそうなんですけど…、こうでもしないと一緒に行けないかなって。」


少し落ちたトーンに罪悪感に似た感情が渦巻く。
…こいつは、分かってやってないからずるい。

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