灯火-ともしび-
彼女の発表が終わり、議論の時間となる。
質問や気になった部分について意見を述べる。


私は少し頭の中を整理する。


「ちょっといいかな?」

「はいっ!」


お、ナイスタイミング、友葉!
私はゼミ中の沈黙を得意としない。
だから考える時間を沈黙としないでくれる発言は助かる。
議論が少し弾んでいるうちにもう少し言葉をまとめよう。


「…夏海さんらしいですね。」

「は?」


不意に小声で囁かれ、私は顔を上げる。
すると彼はレジュメに書かれた私のメモを指先でつついた。


「夏海さんは泣くほど辛いなら辞めちゃいますか?」

「…私は生憎、マネージャーってものをやったことがないから詳しい状況は分からないけど、その状況を改善できずに苦しいままなら辞めるわね。」

「どうしてか訊いてもいいですか?」

「苦しいことは自分で終わらせなきゃ終わらないと思うから、かな。」

「ほーんと、かっこいいですよね、夏海さんの考え方。」

「かっこいいのは考え方だけかい!」

「生き方もかっこいいと思いますけど。」

「あんたに私の生き方の何が分かるっていうのよ?」

「確かに。じゃ、今度教えてください!」

「そーこー?意見があるなら大きな声でどーぞ?」

「あ、ごめっ…ほら、風馬、言いなさい。」

「えぇ、俺っすか?まぁ、じゃあはい。
えっと、あー…13行目に『女性らしさが求められているのではないか』ってあるんですけど、小田桐さんの考える女性らしさってどのようなものですか?」

「あ、はい…えっと…。」


…振ればちゃんと意見を言える。
その点について、私は非常に彼を評価している。

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