灯火-ともしび-
* * *


ゼミが終わり、それでもだらだらと残ってお喋りをしてしまうのはうちのゼミ全体の雰囲気がフランクかつ、先生(って呼ぶのを嫌う変わり者)もゼミ生も仲が良いからだろう。


「あ、来週で今期のゼミ終わりなんで、飲みに行ける人は行っちゃいましょう!」


こういうのを切り盛りするのは美和(ミワ)。飲み会担当。
ちなみに私は卒論発表会担当で役目はすでに終えている。


「夏海さんは参加しますか?」

「え、あー…まぁ一応?」

「あれ、あんまり乗り気じゃない感じですか?」

「別にそうじゃないけど。人と話すのは好きだし。
あんたも来るの?」

「もちろん!夏海さんの正面ゲットできるように頑張ります!」

「…あんたとはいつだって話してるじゃない。」

「っつっても週1ですからね。知らないことも多いですよ。」

「そりゃ、相手の価値観とかそういうものが読めてくるほどの付き合いはないけど。」

「うわーざっくり。ま、確かにそうなんですけど。」


彼は相変わらず明るく笑っている。ほとんど笑顔しか見たことがない。


「おい風馬!帰ろーぜ。」

「おう!それじゃ夏海さん、お先に失礼します。
卒論構想、面白かったです。それとお疲れ様でした!」

「あ、りがと。」


ペコリと小さく頭を下げて、軽快に歩いていく。
そんな彼の背中を見送って、私も自分の荷物を片付ける。


さて、私も帰ろう。

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