灯火-ともしび-

雨と彼のシャツ

* * *


「っ…はぁ…はぁ…っ…。」

「ここで待ってて下さい。今タオル持ってきます。」

「…ごめ…っ…。」



突然の豪雨。
デート場所から近かった風馬の家へと駆け込んだ。


「タオルです。どうぞ。」

「ありがとう。」


風馬からタオルを受け取って髪から滴る雫を拭う。


「…突然の雨って困る。量も多かったし。」

「最近多いですよね、異常気象。」


風馬も髪を拭いながら私の言葉に答える。


「あ、ごめんなさい。玄関に立たせっぱなしでしたね。どうぞ。」

「え…。」

「乾燥機かけますよ。服もずぶ濡れじゃないですか。」

「いや、帰るよ。そんな…悪いし…。」

「雨、しばらく止まないそうです。
風邪もひかせたくないですし。」

「…いいの?」

「むしろ大歓迎です。どうぞ。」

「…お邪魔します。」


私は風馬の家へと初めて足を踏み入れた。

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