灯火-ともしび-
姉としてはもう少し付き合ってやるべきなのだろうが、妹よ申し訳ない。
私は卒論構想をギリギリで仕上げた身。はっきり言ってもう眠い。寝たい。ベッドにダイブしてしまいたい。


「りゅうま、くんってやつはあんたがあんたの好きな格好をしていてブスとかデブとか言ってくるような奴なの?」

「そんなことないっ!絶対言わないよ!」

「でしょ?だから好きな格好で行けばいいんじゃないの?
そんであんたが隣でニコニコしてたら、それでいいんじゃない?
あんただって自分が好きで選んだ浴衣なら笑顔で着れるし見せれるでしょ。」

「…うん。そっか、そうだよね!じゃあお姉ちゃん、一緒に選ぼう!」


…何故そうなる。
察してくれ小夏。お姉ちゃんは疲れているのだよ。
ほら、目の下、いつにも増してクマができてるでしょ?


「ごめん、小夏。
お姉ちゃんは限界だよ。」

「え?」

「大きいレポートの締め切りが今日だったからあんまり寝てないの。
あ、お母さん!先にシャワー浴びるからご飯ちょっとゆっくりめで準備お願いー!」

「はぁい。」


年よりも若い声が返ってくる。のんびりとした母親で、この妹はアリだ。


「でももうすぐお祭りだし…。」

「あー…そっか。燈祭り(アカリマツリ)、もうすぐだっけ。」

「そうだよ!」


燈祭り。それは地元の祭りで、あかり、というだけあってたくさんの〝あかり〟を灯す。
様々なフォルムのランタンや提灯などが飾られ、一年で一番熱くて明るい夜を過ごすのだ。


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