灯火-ともしび-
「シャワー浴びた方が…いいかもしれません。
お風呂、こっちです。」

「え、いいってば。そこまでしてもらわなくても…。」

「でもそれじゃ帰りに着て帰る服がありませんし。
あ、ここです。洋服脱いで入れちゃってください。
着替えは俺ので着れそうなやつ持ってきますから。」

「…なんだかほんと…ごめん。」

「いいえ。バスタオルはこっちにありますんで適当に使って下さい。」


それだけ言い残すと風馬はバスルームから出ていった。
…初めて風馬の家に来たというのにいきなりこんなに迷惑をかけてしまって、申し訳なさで胃が痛くなってくる。


でも、今の風馬には何を言っても無駄というか、有無を言わせない勢いがあるというか…
結局それに押し切られてここにいる。


…仕方がない。いいと言ってくれているのだからそれに甘えることにする。


Tシャツは残念ながらご臨終だ。そして下に着ていたキャミソールもなかなかに死んでいる。ブラだけはギリギリ大丈夫であろう。
ロングスカートは残念ながら水を吸収しやすい素材だったためダメだ。パンツは…さすがに乾燥にかけてもらうわけにもいかないし、我慢できるレベルだ。


結局Tシャツ、ロングスカート、キャミソールを洗濯機の中に入れ、シャワーを浴びることにした。


「…寒かった…。」


熱いシャワーを浴びていて、自分の身体が冷えていることに気付いた。

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