灯火-ともしび-
「ね、知ってるでしょ?」


得意げに言ってるのに悪いけど…


「別に風馬と祭りに行く予定もないんだけど。」

「え?そうなの!?」


…そうだよ?というかなんでそんなわざわざリア充たちがきゃっきゃしてるだけのイベントに行かなくちゃならないのよ。
ランタンや提灯を見るのは好きだし、火も嫌いじゃない。(別に危険な意味は含まれていない)
だけどあの中を一人で知的好奇心を充足させるためだけに歩くなんて、そこまで空気が読めない人間でもない。
よって行かない。論理的に説明できているだろうか?


「ま、私のことはいいから小夏は小夏でちゃんと楽しんでおいで。
シャワー浴びてくる!」

「……。」


ちょっと諦めていなそうな顔をして、それでも小夏は引き下がった。


祭りは嫌いじゃない。骨董品も好きだし、灯りを見て心が落ち着くのも確かだ。
それでも面倒だと思う気持ちが勝る。
それに…


「大体なんで風馬よ?ありえないって。」


そう。もし仮に行くとしても一人でいい。一人がいい。


「今日はゼミでも家でも…年下にやけに構われる日…ね。」


そう呟いて、そんなのはいつもだったということに気付く。
寝不足はやっぱり思考の邪魔をする。
今日は言葉の接続がなんだか上手くいかない。

そんなことを考えながらシャワーを浴びた。

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