私の恋人は布団です。
「ヒドイ~。でも、俺は延チャンに虐げられるのスキなんだからね!」

 軽く,「無駄だよ」と微笑まれる。

(……マゾ……マゾなの!?)

「うん、ちょっと」

 アキラは照れたように頬を染めながら言った。

「と言うか、心の中読むの止めて下さい!」

「だって、しょうがないじゃない。迷える子羊の心は勝手に聞こえてきちゃうんだモン☆」

(日本語が通じない……)

「いやいや、ちゃんと理解出来てマスよ」

 まさに,暖簾に腕押しという言葉の意味を,身を持って感じていた。


 延は,はぁ……と温い溜息を吐いた。


「ねぇ,でも……本当だよ?延チャンは,一所懸命でカワイイけど。独りで頑張り過ぎちゃったりするでしょ。誰かに頼るのは,悪いことじゃないんだよ」


 延は,そういった説教が好きではなかった。

 “人は独りでは生きていけないんだよ”だなんて。

 そんなの都合が良すぎる。

 独りで生きていられれば,それに越したことは無いのだから。

 そう,彼女は思っていたからだ。

 それを,この男は知っているのかもしれない。

< 32 / 95 >

この作品をシェア

pagetop