私の恋人は布団です。
(もう,何なの。本当に……私にどうしろって言うのよ……)
延は清潔な匂いのする保健室のベッドに横たわっていた。
(大体,アレって人間じゃないのに……急に布団に戻っちゃったらどうするのよ?今は少し顔が良いからってちやほやされてるけど,布団に変わるなんて。そんな事が知れたら,皆から不気味だって思われて……)
延は眉間に皺を寄せながら唸った。
「隆也が心配なの?」
延は,いつの間にか眠ってしまったようで,またあの赤いゴージャスな部屋に居た。
どうやら,保健室のベッドで考え事をしながら眠ってしまったようだった。
「先刻だって危なかったんだよ。延チャンが隆也をイジメるから」
綺麗な硝子のマドラーでグラスの縁をなぞって,自称神様のアキラは相変わらず胡散臭い笑みを口元に添えている。
「そ,そんな事言われても……。ちょっと!その前に,どういう事なんですか!アナタが,あの布団に……」
「どーもこーも無いってば。ちょっと力使っちゃったけど。人間って本当,面倒だよね。戸籍とか住所とかさ……」
「そんなの不自然だからでしょう!?布団が!高校生なんて。大体,人間じゃないんだから……」
ソファに凭れかかりながら延は悪態を吐いた。
アキラはそんな延を見てクスクスと一頻り笑ってから,向き直った。