私の恋人は布団です。

「……そう，だけど。そうなんだけどね……」


（いい加減，認めたら良いのに……）


　加南子は，目の前で自分の常識や信念と戦っている様子の親友を目の前にして，そんな悠長なことを考えていた。

「……アイツ，さ」

「うん？」


　延が真剣な面持ちになったので，加南子は思わず身を乗り出した。


「消費税の計算ができないのよ……」

「……はぁ？」


（何言い出すかと思えばこの子は……）


「2次方程式は解けるのに消費税の計算が出来ないのよ！信じられる？」

　加南子は，折角の期待を打ちのめされた気分になりつつ，気の無い相槌を打った。

「へぇ……」


（今のは精々３へぇね……）


「……あのままじゃあ特売品の計算が出来ないわ」


「そうね……」


（……何で特売品……？）