私の恋人は布団です。
「何が気に入らないの?」

「ちょ,ちょっと待って。私,まだ答えて無いんだけど」

「……今の動揺見たら誰でも分かるわ」

 素っ気無く言われて,延は自分が図星である事実から逃げられなくなった。

 確かに,正面切って否定できない。


「確かに引くけどね。布団とか。いきなり好意剥き出しだしね」

 加南子はクスクス笑いながら続けた。

「気に入らないの!」

 強く言い聞かせるようにして,延は氷が解けて薄まったアイスティーを飲み込んだ。

「……だから,何が?」

 加南子は先を促すようにしてゆったりと微笑んだ。

「滅茶苦茶過ぎるわ。疲れるし……周りから誤解されるし」

「そう?」

「それに非科学的過ぎだよ。こんな夢みたいなこと,おかしいじゃない」


「おかしくても,夢じゃないわよ?」

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