私の恋人は布団です。
ジリジリとけたたましく爆裂音を鳴らす目覚ましを,延は片手で投げ飛ばした。
嫌だ,まだ,この布団と離れたくない。
至福の時を邪魔しないで。
延は,布団の何とも言えない温もりに顔を擦り付けて思った。
そして,寝返りをうつ。
トクトクトク……。
規則正しい心臓の音のようなものが聞こえた。
「!?」
延は,跳ね起きた。
「お,お早う御座います……」
申し訳無さそうな男が此方を見ている。
「……な,……な……っ!!」
(もしかして……これってパターン化してない!?)
延は昨晩の自分の行動を思い出して,顔から火が出るような気持ちになった。
いつもなら冷えている筈の指先や頬が熱い。
「済みません!俺,退こうとしたんですけど,寝ちゃって……。でも,延さんが俺を使っているのに気付いて,風邪でも引いたらと思うと押入れにも戻れなくて……」