カタチのないセカイの為に
「怒っちゃったかなぁ。」
優潤は、うつむいて、額に手を当てた。
美咲を怒らせてしまったと思った。

それでなくても、やっと普通に会話が出来るようになったのに、ここで怒らせてしまったら、また『ゼロ』に戻ってしまう。


優潤は『優しい人』だった。

『優しくても、易しいだけではない。』
『優しい』と『甘え』は全然違う意味だと知っていた。



優潤は、『あの時』の彼女を思い出した。
ずっと昔の遠い記憶を…。

美咲は、こんな事で怒る子じゃない。
もし、女の理子が言っていたら、絶対に怒らない自信がある。

しかし、『今の彼女』は、
男に対しては怒ってばかりだ……


凄く寂しそうな眼で、またシャーペンを持った。
いつもなら、スラスラ解いてしまう問題だった。



しかし、凄く難しい『文章問題』を解いている気分だ。

何度か、読み返して、
式を考える。

計算力が鈍る…

美咲の顔が頭の中でチラチラする…


『あー。わかんねー!!』心の中で、叫んだ。
『言い方って言うのが、あるだろう』
『あの言葉じゃ、どんなに優しく言っても、優しくないだろ…』
『もっとこう、うまく…他に…』
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