『主夫』だって『恋』してますけど何か?


優さんと俺の間に沈黙が流れる。


クローゼットの中にはカイトが
優さんにじゃれつく声だけ聞こえる。






「・・・・和樹、マリンはあんたが
いなかったら、私は産んでない。

覚えてるでしょ?

私が妊娠して堕ろそうとしてた事。」

しばらくして優さんが言った。


その声はさっきよりも俺がいる
クローゼットに近くなった気がした。



「でも・・・・その時は、一人で
育てようとしたじゃないですか。」


思い出す記憶。


俺は毎日、毎日婚姻届に
サインして貰おうと必死だった。



「うん。あの時は・・・・
和樹と付き合ってた訳じゃ
なかったし、あんたも若かった。

普通無理だと思うでしょ・・・・
20の男に自分の子供じゃ
ないのに育てるなんて。」


「そうだけど・・・・・」



「私は元々男は信じれなかったの・・・・

父親は私とお母さんを突然すてて
知らない女と新しい家庭を持った。

それで・・・・
ずっと誰とも付き合わなかった。」


「・・・・それなのに藤堂さんとは
付き合ったんだろ・・・・」


藤堂さんの事を考えると
つい冷たい言い方になってしまう・・・
俺は、二人の仲が戻る事を
望まないといけないのに。



「・・・・・そうね、肇は私に
男を教えてくれた人。

男の逞しさも、愛される喜びも
人肌の温もりも・・・・・
全部肇が私に教えた。」



そんなの聞きたくないよ・・・・


優さんの姿は見えないのに
目を閉じた俺。



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