君と杯を交わそう ~契約婚から築く愛~
「陵の理由は?」
「俺は社長なんだけど、兄貴も一緒にやってるんだ」
「お兄さん?」
「そう。で、後継者はどっちがいいかってなったんだけど、その条件の一つに何故か既婚者って言うのがあって」
「それで結婚を?」
「そう。次は純哉」

「俺は実家がある事業をしてて、俺も将来その企業を継いで親と同じ仕事をするって思ってたし、親もそれを望んでた。けど、大学二年の時に弟が高校を卒業と同時にその仕事を始めて、俺を追い抜いていったんだ。それで、俺は継ぐのを止めた」
「弟さんの方が才能があると思って?」
「まあ、そんなとこ。で、父親はともかく母親は俺に後を継いで欲しいと思っているみたいだから時々【帰ってきて欲しい】っていうメールが来るんだ」
「そうなんですか。それがどう結婚につながるんですか?というか、その事業って?」
「その事業はホストクラブ」
「ホストクラブ!?」


そこにいた女性陣が一斉に声をあげた。


「そう。正直わからないけど、結婚したら諦めるかなと思って」
「そうですか。久仁彦さんは?」

「俺はまあ、結婚じゃなくてもいいんだけど。食事を作ってくれる人が必要なんだ。陸上の選手として活躍してるって言ったろ?やっぱり食事はバランスよく摂取しないといけないんだけど、一人だとどうしても偏食しちゃうから」
「それで?」
「うん。栄養士の人を雇えばいいんだろうけど、普段の仕事がこれだからさ」
「これってなんだ。お前のわがままで採用してやってんだ。我慢しろ」
「はいはい。感謝してるよ、純哉」




それぞれの理由。それが何であれ、好きになった人を助けたいというのは誰もが同じ気持ちだった。


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