薄紅の花 ~交錯する思いは花弁となり散って逝く~
「結斗様ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」



鮮血が……舞った。美しく清らかな血が。ずっと信じて、敬ってきた人の血が。


舞う。舞う。飛ぶではない。舞うのだ。舞妓のように華麗に、美しく、それはもう見惚れるほどに美しく。


それと同時に信じていた人が倒れ込んだ。まるで下の磁力に引かれたように。


こんなことあるはずがない。彼が負けるはずがない。


だって彼は今までこんな怪我など負ったことなかった。こんなにもあっさりと負けることなどなかった。


彼は誰よりも精神も剣術も強く、たくさんの努力をしてきたのだ。そんな彼が負けるはずない。


これは夢だ。夢なのだ。とってもとっても悪い夢。此処で倒れている結斗様は偽りの姿。


そう信じたかった。だが現実など甘くはない。偽りだと、嘘だと認めさせてくれないのだ。
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