薄紅の花 ~交錯する思いは花弁となり散って逝く~






彼女が持っていた陶器が手を滑らせ落ちたのだ。

それは落下し、割れた。そして破片が飛び散り、彼女を傷つけた。小さな破片は彼女のやわらかく発達しきっていない肌を攻撃しているのだ。


やめろ。駄目だ。そんな言葉など無駄となり、彼女の腕が鮮血に染められた。赤いそれは畳に落下し、染めあげる。



「紫音。紫音」



必死に名を呼び、血を止めようとするが、叶わない。なんて弱いんだ。自分の力のなさを思い知ってしまう。好きなこの子の血を止めることさえかなわないなんて。


彼女の血が一滴一滴と滴り落ちる度に自分の心が深く傷をつけていく。どうか止まってく
れ。


血は止まらないと、死んでいくと聞いたことがある。そんなことが今起きたら……。急激に体が冷えた。さらに彼女の血を止めようと、必死になる。そんな時。
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