薄紅の花 ~交錯する思いは花弁となり散って逝く~


そう、屋敷の縁側に座り、考えていた。


時は夜。


既に空は暗く、昼間は見えぬ星と月が浮かぶ。それらを隠そうとするのは雲である。昼間の白とは程遠い灰色へと色を変え、天に浮かび上がる光を隠してしまう。が、輝きを放つ星達はそれに屈しず、薄い雲に覆われる中で朧げであるが存在を主張している。そんな夜闇の中神秘な雰囲気を醸し出す木が庭に1本。


名は桜。我が櫻澤家が象徴とする花である。しかしこの桜はそこら辺の橋などに生える桜とは違う。桜が放つ神秘的な雰囲気に相応しい話がある。
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