薄紅の花 ~交錯する思いは花弁となり散って逝く~



桜は、櫻澤当主血筋以外の者にとっては只の桜にしか見えぬ。しかし櫻澤当主血筋のものからすれば只の桜ではない。彼等からしてみれば狂い桜。永遠に咲き続けておるのだ。夏場に生い茂る若葉ではなく、いつまでも散り続ける桜が見えるのだ。しかも散る花弁は液体化した紅き花―――つまりは血液。それは今まで彼らが浴びてきた血。主が負った穢れを桜が吸ったもの。その色が、形が変化したとき、櫻澤家の誰かの死を予言する。とてつもなく恐ろしく、美しい。
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