薄紅の花 ~交錯する思いは花弁となり散って逝く~




可能性を考え、早く出て良かったと思う。


靄に包まれた中進むのは体力だけではなく精神的にも滅入ってしまう。故に通常の登山等よりも多くの体力を消耗してしまう。長年稽古に勤しんでいた俺と静寂の疲労はそこまで濃いものではないが、最近集中的な稽古を続けていた紫音には稽古と登山故の疲労が濃く見える。その紫音の疲労具合を見て、休憩しつつ登山したために何倍もの時間がかかった。しかし足手纏いだとは思わない。もしかしたら休憩なしで登れば、自分や静寂だって疲労がたまっていたかもしれないのだ。紫音の体力を心配することによって必然的に自分の体力を気遣うことになり、最善の体調で迎えることができる。感謝したいくらいである。


登頂まで来ると、靄ばかりではなく陰の気が漂い不気味さを感じさせる。決して人間の体にも良いとは言えない。最終決戦としては素晴らしい舞台ではあろうが、些かきつい気がする。が、やらねばならぬ。


意を決し、陰の気がさらに強まる方へと足を運ぶ。予想通りに兄紅華の形をしただけ者がいた。
< 201 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop