薄紅の花 ~交錯する思いは花弁となり散って逝く~
「私、気を失っちゃったんだ」
紫音は昨夜の出来事を思い出す。
昨夜の彼のことを。彼はいったい誰だったのか。とても不思議だった。しかし悩んでも時間は経つ。
今日もまた学校へは行かなければならない。
紫音はそれに思い当たり時間を確認する。
午前7時50分。もう身支度を済ませ、学校へ向かわなければならない時間だ。
紫音は滑り込むように立ち上がり、押し入れを開けると、中はクローゼット式になっていた。丁寧に掛けられたセーラーとスカートを取り、急いで着替えに入る。黒いセミロングの髪を適当に櫛でとく。そして昨日のうちにあらかじめ用意してあったスクールバックを取り、部屋から飛び出す。廊下を駆け、玄関の扉を勢いよく開ける。
バンッ。
そのまま出て行き、駆けて行く。
駆ける。駆ける……。