シャクジの森で〜番外編〜
高官のあの表情から察っするに、かなり長い間待たせてしまっているのだろう。


急ぎ向かった王の塔。

様々な言い訳を考えつつ“こちらでお待ちです”と案内された部屋を焦りつつも静かに開ける。

と。

予想に反した光景を目にし、取っ手を持ったままに体が固まってしまった。



シンディは髭の侍従長と向かい合い、何事かに夢中になっているようで私が来たことにも全く気付かない。

テーブルを挟み、二人して難しい顔を作りブツブツと呟いている。


お兄様ったら、遅いわ!などと、ムッツリと拗ね頬を膨らませた表情を見るだろうと覚悟していたが、これは・・・、少し、ここで見守るとしようか。


静かに扉を閉め脇の壁に背を預けると、髭の侍従長が私に気付き身動ぎをした。

立ち上がろうとするので、唇に人差し指を当て“そのままで”と手をひらひらさせて合図を送ると、一瞬驚いた表情をした後にんまりと笑って頷き、再びテーブルの上に目を戻した。

そんな侍従長の様子にも気付かず、シンディはテーブルの上をひたすらに睨み続けている。


・・・しかし、これだけ気付かれないというのも、兄としては、何とも切ないものがあるな・・・。

あれは、何をしているんだろうか。


テーブルの上には銀と黒の四角模様の綺麗なボードがあり、その上には小さな人形がいくつも並べられている。

二人はそれをあちこちに移動させているが、やみくもではなく何やら一定の法則があるように思える。



「う~むむむ・・・そう、ここは・・こう、ですな?」

「ええっうそ!もうっ、駄目。それは駄目よ、侍従長」

「駄目は、なしですよ?シンディ様」



侍従長お願い!と甘えた声で食い下がるシンディに、髭を震わせホッホッホと笑いながら首を横に振る侍従長。

真剣そうな割りには、実に愉しげな雰囲気だ。

邪魔はしたくないが、仕方がない、今は私も忙しい最中だ。



「・・・シンディ、待たせたね?」



声をかけると、シンディは人形を持ったままにこちらを振り返り見た。

その瞳がどんどん大きくなっていき、零れ落ちてしまいそうに見える。



「・・お兄様!お仕事はもう終わったの?というか、いつの間に来たの?」

「つい先程来たところだよ。仕事はまだ終わってないが、シンディが待ってると聞いて急いで迎えに来たんだ」



が―――その必要はなかったかな?

意地悪くもそう言ってテーブルの上に視線を移せば、ううん、そんなことないわ!と慌てて人形を放して立ち上がり、首に巻き付き甘えてきた。



「ずーっと、待ってたんだもの」

「分かってるよ・・遅くなって悪かったね」



ううん、いいの。と耳の傍で可愛い声がする。

国王夫妻との食事は、楽しめただろうか。



「・・・侍従長、ご苦労だったね」
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