シャクジの森で〜番外編〜
「いえいえとんでも御座いません。シンディ様のお相手は大変楽しゅう御座います。苦など、何処にも御座いません。このまま朝まででも、平気で御座いますれば」

「朝までとは、それは頼もしいな。・・だが、侍従長。それだと私が徹夜で仕事をすることになるだろう」


勘弁してくれ、こちらが参ってしまうよ。

笑みながらそう言うと侍従長は、これはこれはお若いのに何を仰る。私の若かりし頃は気が付けば空が白んでおりましたぞ、とホッホッホと笑った。


遊びならば、私も何度も覚えがある―――そう反論しかけ、口を噤んで笑み返すだけにとどめた。

今ここには、シンディがいる―――



「あぁそれで、先程から気になってるんだが―――これは、何をしてるんだ?」


いいかい?と一声かけて首に巻き付いているシンディを下ろし、テーブルに置かれたボードに触れてみる。

思ったより厚みの薄いそれは、見た目銀のようだが輝き方と手触りがまるで違う。

素材は堅い金属だが、何で出来ているのだろうか。

人形と見える物の方は馬や人の形がなぞられているよう。

このような物は見たこともなく、ギディオンには無いものだと思える―――



「ね、綺麗でしょ?これはね、お兄様。“チェス”っていうものなのよ。エミリーさんの御両親から国王様への贈り物だって聞いたわ。あちらのお国でよくやる室内遊びのお道具なんですって。難しいけれど、と~っても面白いの。お兄様もやればきっと嵌ると思うわ」



ね、これガラスなの。綺麗でしょう?

そう言いながらシンディはボード上にあった人形を取り、私に渡してきた。

それを指し示しながら説明してくれるに、形によって役割と動ける範囲が決まっているらしい。

掌の上には、透明な女王と半透明な王が乗せられている。


・・・なるほど・・・エミリーの国の室内遊び、か。


「他にも室内遊びのお道具をたくさん贈って下さったらしいわ。また是非見にいらっしゃいって―――・・・」


エミリーの御両親・・・婚儀に参加され、2日ほどの滞在の後に帰国された。

彼女に似てとても優しそうなお二人だったな。

見送った際に見た彼らの寂しそうな笑顔、アランはまた是非御招待したいと―――


―――っ、待てよ・・・遊び――――?



ピン、と閃くものがあり、一つ、ずっともやもやしていた事が、すー・・と晴れていくのを感じた。

そうか。

そう考えれば、納得が出来るというものだ。

あとは、裏付けが取れれば。



「ね・・・お兄様?この手はどうしたの?」
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