シャクジの森で〜番外編〜
「あぁ・・それは薬ではなく・・一種のビタミン剤が入ってるんだ。実は、今朝ウォルターが私の体調を心配してね・・“念のために”とフランクを呼んだんだ。勿論、私は必要ないと断ったんだが、今日はアランが留守だろう?私の体調が悪いと皆が困ると主張するんだ。そう言われては、聞かない訳にはいかないからね」


ほら。この手以外元気だから。すまない、心配掛けるね?

焦りを覚えつつも平穏な声を出し平静を装う。

下手に動揺を見せては怪しまれてしまい、追及が始まりそうだ。

全く、この後ろめたさが、何とも心地悪く感じるよ。



「そうなの、それならいいけど・・・」



安堵したような表情と声、まだ袋を見つめているが納得しただろう。

そう判断し処方袋を返して貰うべく左手を差し出しつつ、机上にあったレスターからの伝書に目を通し集中し始める。

そこには、ラウルから伝え聞いた事柄と木立を包囲した事の次第が書かれ、捜索は未だ継続中とあった。

もう一枚あった走り書きの方には、例の不審物の辺りには顔見知りの使用人が数人現れたのみで、今のところ他に怪しい影はなしとあった。



・・・やはり、そうか・・思った通りだな。

だが、それならば・・・。



「ね、お兄様?」

「―――ん、なんだい?シンディ」



頭の中で完成しつつあるものを散らさないよう、半ば上の空でシンディからの呼び掛けに返事をする。

もう少しで違和感が解けそうなのだ。



「お仕事中なのにごめんなさい。けど、どうしてもわからなくて。ね、これ・・・一日一度からって書いてあるわ。ね、“から”ってどういうことなの?」



ガサガサという音と共に投げかけられた問い。

何の事かわからないままに答えるべく顔を上げれば、シンディは可愛らしく首を傾げて真っ直ぐにこちらを見ていた。

しかも私にアピールする様に処方袋をぷらぷらと振っている。



ガサガサ音はこれか・・

あぁしかしまさか・・まだソレに興味を持っていたとは。

他にすることもなく、ただ待つのみで暇なのがいけないのだろうが・・・。



中途半端に差し出してあった自らの手を引っ込めつつ策を思案する。

返せとの意は、伝わらなかったようだ。

こんなときいつもならば綺麗な手をそっと握りつつ心を捉えるような甘い言葉を吐き、気を逸らせて余計な思考と原因となったモノをそれとなく奪い取るのだが、相手は妹だ、流石にそれは出来ないな。



「ね、お兄様。これは、一日に何度も飲んでいいってことなの?」
< 169 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop