シャクジの森で〜番外編〜
細かい会話は聞こえぬが、二人は仲がよさそうに話している。

時々こちらを見るが、何故であろうか。


少々沈んだ表情のエミリーと、にこにこと満面の笑みを浮かべるサリーがこちらに戻ってくる。

何を話していたのであろうか―――


「エミリー、どうかしたか?」


「・・・あ・・ぇっと・・・このケーキの。このケーキのレシピを教えて貰おうとしたんです。でも―――」

「でも・・・?」

「また今度来たときにって―――」

「―――スミフ!まだかいっ!?」


二人の会話を遮るように、良く通るサリーの声がテラスに響いた。

部屋の中を見るサリーが、腰を手に当てて首を傾げてため息をついている。



「・・・そうカッカするな。サリー、そんな顔ばかりしてるとシワが増えるぞ」


言いながら、スミフがヴァイオリンを持ってテラスに出てくる。

サリーはそんなスミフをじろりと睨んだ。



「それが嫁入り前の大事な娘に言うことかい!ったくもうっ」


睨むサリーに、ははは、すまんな、と悪びれもせず軽く言うと、スミフは二人の前に居住まいを正して頭を下げた。



「王子様、王子妃様。お待たせ致しました。このたびはご結婚おめでとう御座います。僭越ながら御祝いに、一曲弾かせていただきます。あわせてサリーのダンスもお楽しみ下さい」


再び丁寧に頭を下げた後スミフがヴァイオリンを構えると、サリーは、フッと息を吐き腕を頭上高くあげて構えた。


呼吸を合わせ、最初の音が凛と鳴り響くと、同時に、サリーの細い手首がくるっと反され鈴の音がシャン・・・と鳴った。



スミフの奏でる情熱的な旋律に合わせ、しなやかに腕を動かし鈴の音を鳴らしながら、細く綺麗な脚がステップを細かく刻む。

身体の向きを変えるたび黒レースのスカートがふわりと広がり翻る。

シャン・・シャン・・と鳴る鈴は、スミフのヴァイオリンの音色と重なり、極上の旋律となる。

ス・・と伸ばされる指先までもが美しく踊り、サリーのダンスとスミフの奏でる情熱的な旋律に、すっかり心を奪われてしまった。


最後の音が強く弾かれ余韻が消えると、サリーは荒い息を吐きながら頭を下げた。



拍手をするエミリーのアメジストの瞳がキラリと光り、涙が一滴零れ落ちる。


「あぁ、ごめんよ。王子妃様、何か気に障ったかい?」



サリーの口からオロオロとした言葉が漏れる。

エミリーは零れる涙を拭き、所在無げにあたふたと動くサリーの手を握った。



「サリーさん・・・ごめんなさい・・・泣くつもりなんてなかったのに・・・お二人のプレゼントが、あんまり素敵で、感動してしまって。気を、悪くしないでください」
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