シャクジの森で〜番外編〜
「だからぁ・・何度言えば分かるんだい。さっきから、私は王子妃様の友人だ、って言ってるだろ!?」


「100歩譲って、それが本当だとしてもだ。王子妃様は静かに休まれておられる。お前のような煩い者など入れられん」


「そんなこと言わずに、静かにするからさ」


「信用できん!駄目だ、駄目だ。さぁ帰れ!」



サリーは目の前に仁王立ちしている警備の男を睨みつけた。




―――まったく、この男は、なんて頑固なんだろうね!?

もう一人の男は無言のまま通りの方をキョロキョロと見てるだけだし。

これじゃ、埒があかないね。

やっぱり、会わせてもらえないか・・・。

このまま帰るしかないのかねぇ・・・。


でも・・・これだけは―――


「じゃぁ・・・アンタ、コレを」


会うのを諦め、せめてコレだけは、と思いつつサリーが声をかけると、警備の男は無視するようにくるっと背を向けてしまった。



「ちょっと、アンタ!人が声掛けてるのに、何無視してるんだいっ」



・・・まったくもうっ。

この男は、きちんと人の話を聞きましょうって、教わらなかったのかね?





「何をしているんだ?」



イライラしながらもう一度声をかけようと息を吸い込んでいると、理容店の入口から男の人の声が聞こえてきた。

なんだか立派そうな口調だね・・・高貴なお方の雰囲気がするよ。


警備がぴしっと居住まいを正して、直立不動になった。


なんだい、さっきまで横柄な態度だったのに。

同じ男だとは到底思えないよ。


この声は・・・アラン王子に似てるけど、あの方はこんなにソフトじゃない。

誰だろうね・・・。




「そうか・・・分かった。私が話を聞いて判断しよう」

「いや、しかしこんなことでお手を煩わせるなど―――」

「いいんだ。女性にはもっと優しくするものだ。君は下がっていろ」



柔らかな声の主は、戸惑う市場警備を優雅な手つきで制し、頭を下げる警備の横を通って歩いてくる。


こっちに向かって歩いてくる。


アラン王子よりも短い銀の髪。


優雅な歩き方、優しげな雰囲気。




――――!?ちょっと待ってよ・・・この方は・・・この方はっ・・・。





「こんばんは、お嬢さん。市場警備が失礼をしたね。私は兵士長官のパトリック・ラムスターだ。私が話を聞こう」


「こ・・・こんばんは・・・」


「まず、君の名前を聞いてもいいかい?」
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