オトナの秘密基地
意外そうな声が返って来た。

もしかしたら、今まで触ったことがないのかも知れない。

何しろ和子さんは昔の妊婦さんだから、どんなマタニティライフを送っていたのかもよく知らないし。

でも、ここは旦那様に触ってもらうのが最善だと思う。


「どうぞ。あなたの子ですから」


そう言うと、旦那様は布団から起き出して、カツヤの足元を通り、こちらへ来た。

私も布団をまくり上げ、もう一度仰向けになる。


「ほら、こんなに元気ですよ」


隣に座った旦那様の手を取って、誘導した。

浴衣越しに、大きな骨ばった手が当たる。

おそるおそる触っている感じだったので、しっかり触って欲しくて私の手を重ねた。

その途端、大きな胎動があって、旦那様が息をのむ音が聞こえた。
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