オトナの秘密基地
きっと、伝わったと思う。

旦那様の掌と心に、この子の確かな存在が。


「わかりましたか?」


「ああ。……こんなに元気なのか」


「元気すぎて、眠れませんよ。

あ、こっち側も動いています」


旦那様のもう片方の手も取って、反対側に当てて、動く場所を教えた。

今度は、遠慮せずにしっかりと触っている。


「これは……足と手を動かしてるのか?」


「そうかも知れませんね」


「ははは、母さんが眠れなくて困ってるぞ。

夜中くらいは静かに眠るといい。

生まれてきても、夜泣きは控えめにな。

母さんに無理させるんじゃないぞ」


そう言って、両手で大きなお腹を撫でてくれた。

無骨で大きい、軍人さんの手。

でも、その掌に優しく撫でてもらうと、安心したかのように、穏やかな胎動に変わった。

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