オトナの秘密基地
それぞれ都合よく解釈して、遠慮なくおにぎりを食べている。

飛行機のエンジン音が聴こえなくなり、少しだけほっとした中で食べるおにぎりは、今まで食べたものの中で一番美味だと思った。

人間、お腹がすくとイライラして些細な事でもケンカになる。

それを緩和し、いざという時にすぐ動けるようにと握ったおにぎりだった。


「握り飯を美味いと思って食べられるっていうことは、何て幸せなんだろうねぇ。

生きてる証拠じゃあないか」


叔母さんがいう言葉にみんな同意しつつ、おにぎりをほおばった。

お腹が満たされると、今までの刺々しい雰囲気が、幾分緩和されるような気がした。


ようやく空襲警報が解除され、恐る恐る外へ出てみると、まず目に付いたのは、防空壕の外側の扉に突き刺さった銃弾だった。

薄っぺらいトタンと『秘密基地』が、私たちの命をしっかり守ってくれた。

生きているだけで、幸せ。

常に死と隣り合わせのこの時代で、私はやっとこの言葉の意味を理解できた。

生き抜くことは、奇跡の連続なんだっていうことを、平和ボケしている私はすっかり忘れていたのだから……。
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