オトナの秘密基地

「俺と釣り合わない? そうだな。和子はよく気がつく。いつも裏表なく働いている。まだ若くてこんなに器量がいい」


 私の頭に積もってしまった雪を優しく払ってくれた。

 そして、その手が私の両ほほに当てられる。

 若旦那様の手も私のほほも、同じくらい冷たかった。

 冷たい手でほほを支え、上に向けられる。若旦那様のお顔を直視することとなり、今まで冷たかった私のほほが、急に熱くなったような気がした。


「俺は軍の命令で、明日最前線へ行くかも知れない。命の保証はない。若くして後家になるのは嫌だ。そういうことか……」


 え? どういうこと?

 私が考えていたのとは全く違う答えを導き出してしまったの?

 若旦那様の誤解を早く解こうと、首を横に振ろうとした。だけど、ほほに手を当てられていてそれができなかった。


「暴れるほど俺のことが嫌いか? 正に襲われ、俺にも襲われると思ったのか?」


 若旦那様が、手を放した。傷ついた眼をしているのがわかった。

 そんなはずはない。私はお顔を直視したまま、正直な気持ちを伝える。

 身分が違う、身の程知らずだと、毎日自分に言い聞かせてきた言葉を。
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