空蝉の光 -桜花乱舞-


「帰って。これは私が望んだことなの」



「だったら、何で、泣いてるの?」



私は自分の頬に触れた。



手には涙がついていて、頬はその雫で濡れていた。



ようやく、恭介と婚約することを割り切ったのに…。



どうして、私をこんなにも掻き乱すの?



「――て」



「え?」



「どうして、皆こんなにも私を苦しませるの…ッ!?」



私は一哉君の胸を叩いた。





< 145 / 244 >

この作品をシェア

pagetop