プレシャス







“一人でいい”









吐き出されたのは
何の躊躇もなく


ただ
まっすぐなひと言。




からかうように口にした言葉に、こんなひと言が返ってくるとは予想してなくて


思わず
坂井君を見上げたままのあたし。

そんなあたしの視線に気付いたのか、








「…なんて、冗談です」







ほんの少し耳を赤くして目を逸らした。







「…坂井君照れてる?」

「…照れてないし」







ごまかすように、磨いたグラスを棚へと片付け始める後ろ姿。








…なんか
かわいい。

一見、大人っぽくてなんでもサラッと流しちゃいそうなのに








年相応

不意に見せたそんな部分がかわいくて。

つい、クスクス笑うあたし。









「なんか今日は坂井君のいろんなとこ見れたかも」








ごちそうさまって笑顔を向けると、ほんの少し目を細めて。






「元気…」

「え?」




「元気でたみたいで良かった」







安心するかのような

ホッとした顔で優しく笑った。












…もしかして
気にかけてくれてたのかな










そう思った途端


トクン…と





胸の奥の方で
何か大きくはねた。










…なんだろう
これ…


ねぇ…?




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