プレシャス
改札口を抜けて
勢いよく階段を駆け上がって
その間
ずっと繋がれたままの右手。
伝わる温もりに胸の音が加速したままだった。
「…は…間に合った…」
駆け上がる階段を抜けてプラットホームにたどり着くと
二人とも息切れでグッタリで。
でも…
「あはっ、あたし…全力疾走、高校生以来かも」
「は…っ…俺も…」
明日、筋肉痛だって笑う坂井君。
目が合うと
二人とも吹き出して笑った。
変なの
何がおかしい訳じゃないけど…なんか楽しい
こんなに笑ったの
久しぶりだ。
「えと…坂井君どっち?」
「俺、広町」
「そっか、あたしと逆方向だ」
チラホラと
ホームに見えてくる終電目当ての会社員や学生の姿。
ゆっくりと最終時刻へと進む時計の針。
『ただ今、2番乗り場に…』
構内に流れてる最終のアナウンスが届いた時には
あたしも坂井君もただ言葉もなく立ち尽くしてた。
でも
繋がれたままの手はそのまま離せないままで…。
「あの…さ」
遠くの方にあたしの乗る電車の光が見えた時
静かに口を開いたのは坂井君だった。