幽霊の思い出話
「なんだったんだ」
一瞬の出来事に、俺はあっけにとられた。
「残留が決まったら、まだ八木邸に世話にならなくちゃいけないからな。その手配をしろとでも言いに来たんだろうよ」
「そっか。これは誰が松平(マツダイラ)さんに提出しに行くんです?」
俺は嘆願書を指差しながら聞いた。松平さんは会津藩の藩主だ。
「芹沢さんと近藤さんだな。さてと、これで全部だ。早々に出しに行ってもらおう」
まとめた嘆願書を持って土方さんは立ち上がった。どうなるのか、気になって仕方ない。嘆願書を持った土方さんが部屋から出て行くのを見届けて、俺は部屋へと戻った。