幽霊の思い出話

 そう問い掛けると、目を反らし下を向いた。

「そうやって前にも饒舌に話したことがありましたね。確か・・・あ」

 そう、あれは石川様の部下の方が事故で亡くなった時だった。

「ははは。本当おまえには敵わないな。さすが鋭い」

「えっ?」

「・・・お袋がな、亡くなったそうだ」

 そう言って石川様はグラスをテーブルに置き、ソファーにもたれながら天井を見上げた。私は何も言えず、ただ黙って彼を見つめることしか出来なかった。
< 52 / 279 >

この作品をシェア

pagetop