ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
なんだ……

ひそかにほっと胸をなで下ろす。

それで、ありがとうって言われたんだ。きっと。


横向きに置いた椅子の背もたれに肘を掛けてもたれる女の子が、高い技術で描かれていた。

圧倒的な存在感を持って、まっすぐこちらを見つめてる。


(すごい迫力……さすが黒川さん)


いつもの黒川さんの絵みたいにわざと歪ませずに、素直に描いた絵だけど、それでもどこか胸に迫る狂おしい翳があった。


(あれ? この顔……)


どこかで見た、顔。

あたしによく似てよく描けてるけど……何かが違う。


(――あ!)


突然思い出す。

テレビで見た、秋月レイさんの遺影。

あれに、そっくりだ。


……自分が死んだような気がして、急に背筋がゾクッとした。

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