愛のかたまり
 あまい匂いを感じて目が覚めた。

 目の前には美しい顔。すっきりと厚い化粧を落とした顔は昨日よりほんの少し若く見えた。

「まあ、ほんっとよく寝る子ねえ」彼女はちょっとあきれたような顔で言い、ミルクティーのカップを手渡した。

 ゆっくりと身を起こしカップを受け取る。あまい湯気がたち、赤茶と白のマーブルが薄茶へと統一されてゆくのをぼんやりと眺める。

 いやむしろここのところずっと眠らずにいて周りを困らせていたんだけれど、と心の中だけで言い、黙って少しぬるめのミルクティーを啜った。
 
 ひどく、あまい。

 まだ頭も身体も半分以上眠りの中にいて、なんとなく声も出ないような気さえした。


< 19 / 88 >

この作品をシェア

pagetop