愛のかたまり
「いらっしゃい」海さんが言った。

 なんとなく抗いがたく、誘われるままに彼女の後について寝室を出た。

 リビングのスクリーンには抜けるような青空がひろがって、午前の透明な光が注ぎ込んでいた。

「さて、これはなんでしょう!」

 じゃじゃじゃーん、という擬音つきで彼女が嬉しそうにソファのかげから取り出したのは、大げさにリボンの結ばれた箱だ。

 大人なのに、まるで子どもっぽい仕草が見苦しくないのはなぜだろう。天真爛漫そのものの瞳が答えを待っている。

 仕方なくといったふうに包みを開けると、中身は少し前に話題になったゲーム機だった。答えようとしたが、声は喉の奥で絡まった糸のように縺れあって出てこない。

 
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