翼[短編]
「あなたの背中には大きくて輝いている翼がありますよ。勇気…。あなたが名前の通り、勇気を持てば、その翼はきっとあなたを大きく羽ばたかせてくれるでしょう。」
『何で…俺の名前知ってるんですか?』
確かに俺の名前は「勇気」だけど、俺はここに入ってから、一度も名前を口にしていないはずだ。
もちろん、彼女に会ったことは一度もないし、名前が分かるようなものは身に付けていない。
「占い師は何でも分かるんですよ。あなたの背中には翼があります。頑張って、羽ばたいて行ってくださいね。」
本当に俺の背中には翼があるのかもしれない。
そんなことを本気で信じ始めていた。
彼女は相変わらず、にこにこ笑っている。