泣き顔の白猫

伏せた目。
月明かりや外の街灯に照らされて、頬に睫毛が影を落とす。

青白い光に浮かぶ姿が、やけに幻想的で、綺麗だと思った。

こんな話を、しているのに。

「……どうして」
「どうして、知ってるのか、ですか?」
「うん」
「加原さんが、館商高校に入っていくところ、見ちゃったんです。この間」

デートの約束をした、あの日のことだ。
それに思い至って、加原は慌てて言った。

「あ……そうだ、謝ろうと思ってて。あの時、行けなくてごめん」
「それは……メールでも、電話でも。散々聞きました」

文字通り“聞いた”のだというこっ恥ずかしい事実は伏せて、名波は顔も伏せる。

「や、でも、こういうのは直接」
「ほんとはっ、」

少しだけ荒れた声に、遮られる。
暗くてよく読み取れない表情がもどかしいが、近づいてはいけない気がした。

「本当は、いけないんじゃないですか。警察官なのに、……前科者と、こんなふうに」
「……それは」

警察が体裁を気にする組織だということを、名波は言っているのだろう。
加原だってそれはよくわかっている。

「でも、俺は」
「ダメです」

それ以上は、と囁いて、名波はゆっくりと暗闇の中を歩いた。
細い肩が、影に隠れていく。

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