泣き顔の白猫


「まぁ、私も面倒に思ってたし、相手も私のことなんとも思ってないの、わかってたから。恋人らしいことなんかなんにもしなかったんですけど」

正直、もし恋人同士としての“やること”をちゃっかりやっていたとしたら、こんなに冷静に聞いてはいられなかったに違いないと、加原は思っていた。
高校生、しかも故人に嫉妬なんて、幼稚すぎて自分でも笑えない。

「そんな、付き合ってるのかなんなのか、よくわからない関係が……二週間もなかったかな。十日くらい、経った頃でした。……畑野くんが、亡くなったのは」

名波が語るのを、加原は何も言わずに聞いていた。
暗闇にぼんやり見えるカウンターを眺める。

「それからまた十日くらい経って、急に警察の人が家に来たんです。話を聞くだけだからって言うので、付いて行ったら」

そのまま、逮捕されました。

静かな声色は、もう何十年も前の出来事、自分が経験していない、他人事を話して聞かせているようだった。
たった五年前のことをだ。

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