泣き顔の白猫
「話を聞きたいからって呼ばれたのに。たぶん、私の言ったことなんて、半分もまともに聞いてもらえなかったと思います」
なにを言っても、聞いてもらえない、信じてもらえない。
それは、まだほんの十七歳、高校生の少女を意気消沈させるには、十分すぎたのだろう。
「最初に家に来た刑事さん、優しかったんですけど。途中で、取り調べの人が変わったら、すごく怖い人で」
途中で、というのはきっと、名波が証人から、重要参考人に変わった時のことだろう。
単純に被害者の話を聞くことから、名波を尋問し、犯行を立証することに、目的が変わったからだ。
(最初の人って……もしかして、ヤスさん)
加原は、名波が『りんご』で働き始める少し前から、安本がここではなく違う定食屋へ通うようになったことを思い出した。
彼は、名波がここにいることを知っているのだろうか。
後輩が、自分が過去に取り調べた殺人犯と、個人的な――例えば、非番の日に二人で出掛ける約束をするような――知り合いになっていることを。