泣き顔の白猫
遠くで物音がする。
車のブレーキ音、パトカーのサイレン、酔っ払いの怒鳴り声。
それに比べて、『りんご』は静かだった。
背中合わせに後ろに座る名波の、少し緊張気味の吐息さえ聞こえる気がする。
加原は口を開いた。
「嘘の証言をした、クラスメイトたちのこと……」
「鈴木くんたちですか? ……亡くなったん、ですよね」
「どうして君に罪を着せたのかな……」
「誰でも良かったんじゃないですか。たまたま私に、ちょうどいい動機がありそうだったから」
「どう、思ってる……?」
「恨みました」
あまり静かに言うので、加原には、一瞬名波が何を言ったのかわからなかった。
作ったみたいに、声色が読めない。
ずくりと、心臓に冷水を浴びせられたような、嫌な鼓動の鳴り方をした。
「憎んでました。死んでしまえって思ったこともあります」
「……名波ちゃ、ん」
「私、加原さんにはどんな嘘も吐きたくないです」
真意を見せてほしいと、心を開いてほしいと、ずっと思っていたのに。
ようやく剥き出しにした名波の本心は、痛々しく削られていて、棘だらけだった。
そこに触れようとして、加原は迷ってから、手を引っ込める。
触れば怪我をする。
癒したいのに、自分まで深く傷を負ってどうしようというのだろう。