泣き顔の白猫

その時、ドアベルが鳴った。
二人連れの女性が入って来たので、名波とのお喋りは一時中断になる。

あまり名波ちゃんをサボらせないでくださいよ、とこの間マスターに言われたが、加原が来るのは大抵閉店間際、言っては悪いが、あまり客のいない時間帯だ。
加原が座るのはいつもカウンター席、一番奥の端の椅子。
職業病か、すぐに外に出られ、かつ店内を見渡せる場所を思わず押さえてしまうのだ。

二人が忙しそうな時はそうして店の中を眺めてみたりするが、見る顔はだいたい決まっている。
こんな時間に常連じゃない客が来るのは、珍しいと言っていい。


そんなことを考えていたからか、その二人組の女性客を、遠くからまじまじと観察してしまっていた。

露出度の高くない服装。
派手な色も使っていない。

(森ガール……とかいうんだっけ、あーゆうの)

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