泣き顔の白猫

なんか俺すごい変な人じゃん、と思いながらカウンターに向き直ると、マスターが声もなく笑っていた。
一部始終を見られていたらしい。
苦笑いを返す。

名波の「ホットケーキ二つと、ラテとオレです」という声が聞こえた。

カウンターに入ってミルクを温めはじめる名波と、目が合った。
それが、ふい、と逸らされる。

「あのお二人」
「へ?」
「加原さんのこと見て、かっこいいって言ってましたよ。声かけようかな、って」
「え」

不意のそんな言葉に、思わず「俺?」と自分を指差す。

クールな目付きで軽く頷いた名波は、コンロの火を止めると、そのままカフェラテとカフェオレを作りはじめてしまった。
邪魔するのは悪いので、加原はそれ以上リアクションができない。

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