泣き顔の白猫

丸っこいシンプルなカップにエスプレッソとコーヒーを淹れて、温めたミルクを注ぐ。
エスプレッソの方には、そこにミルクフォームも。
流れるような手つきで、正確に丁寧に作られるそれは、魔法のように見える。

二つのカップは、ホットケーキの完成を待たずにテーブルに運ばれた。
名波が出来上がったホットケーキを取りにカウンターに戻ってきた辺りで、背後から小さく「美味しい」と言う声が聞こえる。

そうだろ美味しいだろ、と、加原は勝手に一人で得意気な気分になった。
しかしそんな彼に、もう一仕事終えて戻ってきた名波から、手痛い一撃が加えられた。

「店内でナンパとかしないでくださいね」
「はい!? な、なに、急に」

何かしらの表情が顔に出ていたのかと、動揺した。

行動を起こす前から本人に釘を刺されるなんて、恥ずかしいにもほどがある。
だが名波の視線からすぐに、あの二人組のことを言っているのだと思い当たった。

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