泣き顔の白猫

名波と、二人の女性客。
見た感じでは三人とも二十代前半、恐らく同世代だろう。

『りんご』でしか名波に会わない加原は、彼女がお洒落をしているところを見たことがない。
だが、普段からそれほど着飾る方ではないのだろうということは、履き慣れていそうなジーンズやスニーカーから、なんとなくわかる。

同年代でもこうも違うものなんだな、なんて考えて、加原はどこかに引っ掛かりを覚える。

“同年代”。
――いや、“二十代前半”だ。

「あ」

思わず声をあげた。

名波とマスターが、加原の方を見る。
「えーっと……」と、とりあえず声を発してから、口にする言葉を選ぶ。

「名波ちゃんって、二十歳ちょっとくらい?」
「二十三です」

女性に年齢を聞く失礼さに、言ってしまってから気付いたが、名波は少しも表情を変えずに答えた。

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