泣き顔の白猫
「加原よぉ、彼女でもできたか?」
唐突にそう言われたのは、車の運転席のドアを閉めたときだった。
助手席から降りた安本が、ふと口にしたのだ。
「えっ? なんですか、急に」
「いや、最近忙しいっつーのに、機嫌はやけに良さそうだから。そーゆう時はな、結婚してる奴なら子供が出来た、独身なら女が出来たって、だいたいわかるんだよ」
「えぇー……違いますよー」
否定しながらも加原は、口許が笑ってしまうのを感じた。
それを見た安本は、隣を歩きながらにやりと笑む。
「だらしねぇ顔して。ネタは上がってんだよ」
まるで、一昔も二昔も前の刑事ドラマのような言い方をする。
だが加原が、「違いますって。仕事に慣れてきただけですよ」と、わざと少しムキになってみると、安本は簡単に手の内を明かした。