泣き顔の白猫
この事件については、他に特になにか手がかりがあるわけでもなかった。
若い男が三人、たまたま同じ午前一時に死んでいただけのことで、それに気付いた者も、はじめはいなかった。
だが、被害者の身元を調べるうち、捜査員が発見したのだ。
塚原晃一は館町生まれの館町育ち、高校も市内の市立館町商業高等学校であり――たった二週間の内に、二人の同級生が不慮の死を遂げている、ということを。
「転落は微妙なところだよなぁ……せめて歩道橋の方くらい、目撃証言が出てもよさそうなもんだけどな」
「期待する方が無駄でしょう。車に轢かれなかっただけ、よかったと思わないと」
「まぁ、夜中の一時じゃな。あの辺りは、何があるわけでもないし」
「一時かぁ……」
そう呟いて、加原は腕時計を見る。
昨日の深夜(正確には、今日の)一時頃といえばちょうど、帰宅した加原が、時計を見た頃だった。
名波もこんな時間に一人で帰るのか、とか、そんなことを考えていた気がする。